欲望その94

ライドは ゆっくりと進むタイプだ
前を行くライドとは 多少距離がある

角を曲がるとライドは向きを斜めにして進む

するとガラス張りの長い通路になっていて
蝋人形のような人体像が並んでいる
これが複製像か と思った

いろいろな人が 思い思いのポーズをしている
かなりリアルだ
自分の像を早く見たい と思うが
他人の像も それぞれ面白いので つい見入ってしまう

親子3人で記念撮影をしているような像もあれば
手をつないでいるカップルの像もある
中には固く抱擁し キスをしているのもある
永遠の接吻像だ

変わった像もある
多分 わざと動いて測定したのだろう
人体の形状を成していない
抽象的な彫刻のようになっている

全部で何体くらいあるのだろうか
これまで夢御殿を訪れて
パーマネントコレクションへ同意したゲストの
数だけある のだろう

稀に 若い女性のヌードがある
自分の美しい肉体を永遠に保存したい のか
年老いて 再びこのライドに乗り 
あれが私だ と懐かしむのかもしれない

男のヌードもある
鍛えられた筋肉を 誇らしげに見せるポーズを取っている

前を行くライドから歓声が上がった
閃光が見えたので 多分写真を撮っているのだろう
自分たちの複製像が登場したのだろうか

どんな像なんだろう と思いきや
女の子ふたりが 流行の服を着て ピースしている
なんてことはない 街でよくいるタイプだ
彼女たちにしてみれば 記念的行事なのかもしれない

その次に現れた像を見て 一瞬目を疑った