2006-05-01から1ヶ月間の記事一覧

欲望その137

狭ければ狭いなりに 人は生きていける では 広大な敷地と家を持った場合 人はどうなるのか 空間を持て余し 有効活用できない のかもしれない 夢御殿は 敷地が無限大に広がる 多分 私が一生かかっても 使い切れないほどの 広大な空間が… 人間は 欲望の塊だ い…

欲望その136

夢御殿には 長年咲かなかったスズランがある 今年は花の蕾が出てきたので 毎日 その生育を見守っていた 霧のような細かな雨が降ったとき 傘を差さずに歩く人の姿が多かった スズランを見ると その葉は微量の雨を受け止め 水の粒を作り出していた 僅かな水分…

欲望その135

子どものころ マッハ GO GO GO という歌の アニメが放映されていた レーシングカーのようなマシンは ジャンプしたり ノーズからノコギリを出し 木々を切り倒しながら 森の中を走っていく オープニングソングのとき 恐竜の肋骨の間を走り抜ける シーン…

欲望その134

今日はサンドラ杯の開催日だ サンデードライバーズカップの略だ 平日はクルマに乗らないが 休日になると 公道に現れてくる 異様に遅いドライバーたちがいる 今は ウィークエンドドライバー と 呼ぶのかもしれないが 日曜日に開催するので これでいい クルマ…

欲望その133

今日はパドックで ドレスアップコンテストが開かれる 昼の部 と 夜の部がある 改造車のコンテストは別途開催しているので このコンテストは クルマの形状自体はいじらない ノーマル車を いかに個性豊かに 彩るか というのが趣旨だ 昼の部は ステッカーを貼っ…

欲望その132の5

書類は この建物の化学構造式 すなわち 平面図だ 美人建築家は それに見入っている 私も その書類を覗き込むと 記憶が蘇ってきた そうだ! 名前を思い出した パリトキシン! 猛毒なんだ 毒? たしか アオブダイ っていう魚にあるらしい で 何で毒なの? 毒と…

欲望その132の4

真剣な顔で 私に質問を浴びせた その人の 理想の住まい に対する あなたの回答が これですか? つくばい は欠かせないアイテムでしょ… 知足のものは貧しといえども富めり 不知足のものは富めりといえども貧し… 禅の教えを図案化した その人の文章を どう解釈…

欲望その132の3

この建物は 化学構造式をモチーフに設計したんだ 物質の名前は 今 思い出せないけど とにかく複雑そうなのを選んで プラン化してみた と説明すると 美人建築家はこう言った 一応 理想の家のひとつ ってことになってるけど… そう 3年前の個展で 「あなたにと…

欲望その132の2

そうだねぇ じゃあ意識の更衣室へ行こうか と言うと あそこは前に行ったから結構です 夢殿を少し小さくして 中に琉球畳が敷いてあるんでしょ と言う なんだ 知ってるのか じゃあ ゲストルームが空いているから そこへ と言うと そこもさっき見ました ホテル…

欲望その132の1

夢御殿に 黒いスーツ姿の女性が現れた さっそうと歩き 立ち止まっては写真を撮っている 何かを調べているのか ちょっと気になったので声をかけた こんにちは いい写真が撮れましたか 振り返ったその顔にドキッとした きれいだ 私のことを不審に思ったのか 返…

欲望その131

私のプライベートゾーンには吹抜がある 高さは5メートルくらいだろうか その吹抜の部屋で この記述を進めている 部屋の周囲の壁には 本棚があり 蔵書が いつでも取り出せる しかし 何年も手にとって見たことがない 書物がたくさんある だから 陽気がよくな…

欲望その130の10

家はなかった あれっ 道を間違えたかな と思い 周囲を見回すが 確かにここだったはずだ 私は 道を覚えるのは 得意な方だ 一度 通ったところは 忘れない 途方にくれる 竹林の荘厳な雰囲気に飲み込まれそうだ あれは 夢か幻 だったのか 竹林は いつでもミステ…

欲望その130の9

私はいつの間にか眠ってしまった ようだ 気がつくと 横に美人スタッフの姿はない どれくらい時間が経ったのかもわからない 起きて リビングルームへ行くと 外は薄暗い 朝なのか 夕方なのか わからない テーブルの上にメモが置いてあった すみません 仕事があ…

欲望その130の8

私たちは 互いの名も知らない でも 今 こうして体を寄せ合っている こうなる前に 名前くらい聞いておけばよかった しかし 今更 聞けない ムードが壊れてしまう かもしれない 名前は 社会的に個人を特定するため 便利な制度なのかもしれないが 男女の仲には必…

欲望その130の7

ベッドの寝心地はいかがですか と聞く すごく いいよ と答える あの と美人スタッフが 切り出す 私も入ってよろしいですか 自分のベッドなのに どこまでも奥床しい ああ と答えると そっとベッドへ入って来た 心臓が高鳴る 上を向いたまま じっとしている と…

欲望その130の6

暗い部屋の中央にベッドらしきものが見える やはり寝室だ 寝心地をお試しになりますか と聞かれ また 股間が盛り上がってくる 聞き分けのない息子だ でも 暗いので悟られないだろう 私が躊躇していると さあ どうぞ ご遠慮なさらずに と言う 私は 沈黙したま…

欲望その130の5

君は この家に ひとりで住んでいるのかい と聞く 美人スタッフは はい と答え ビールを一口飲む 中央の扉を指差し あのドアはキッチンの入口かな と聞くと ええ と答え またビールを一口飲む じゃあ と言い 左の扉を指差し あっちのドアは と聞くと ビールを…

欲望その130の4

お召し物は洗濯しましたので バスローブをお使いください スリッパのまま リビングへ お越しください さっき開けなかったドアの中で 洗濯機の音がする バスローブを着て リビングへ行くと おビールでも いかがですか と聞かれる いいねぇ と言うと すでに用…

欲望その130の3

中はバスルームだった 照明を点けると 白壁が美しい 中へ入ろうとすると すみません ここは靴を脱いでください と言われたので 靴を脱ぐと これを どうぞ と白いパイルのスリッパを床に置く 大きな鏡と 白亜の洗面台があり その横に扉があった このドアは と…

欲望その130の2

竹林の中にひっそりと佇む 小さな家だった 白壁に赤い屋根 が竹林の緑に映える 玄関の扉を開けると リビングルームのようだ 室内は意外に広い 靴は脱がなくていいのか と聞くと そのまま 入ってください と言う 今 お茶をお入れしますわ と言って 別室へのド…

欲望その130の1

露天風呂から 一旦あがり ビールを取ってきて 広縁で栓を開ける 至福の時間だ 少し体が冷めると ビールを片手に ゆっくりと 露天風呂に浸かりながら 竹林の中を さまよっていたことを思い出す 竹林の番人に会いたい と思って出かけたが 結局 会うことができ…

欲望その129

随分 遠回りしてきたが うっそうとした竹林を抜けて 我が家に戻ってきた テラスから家の中へ入る やはり自分の家へ着くとほっとする 靴を脱ぎ バスルームへ行く 服を脱ぎ シャワーを浴びて 露天風呂へ浸かる 浴槽から 少し湯がこぼれる いつ見ても いつまで…

欲望その128

夢御殿に彫刻家が訪れ ここを気に入って 自分の家を建てはじめた 抽象彫刻の作家なので 家も抽象的だ 彼の彫刻作品は 慰霊碑が多い 何となく厳かで 近寄りがたい 彼の家もそんな印象だ 楕円と方形が不規則に組み合わされ 不安定のようだが 重力の法則には合…

欲望その127

必要は発明の母である と誰かが言った 欲望は生産の源である と私は言ってみよう 持ち家がない人は まず家を所有したいと思う 生涯の自分の労働力を担保に借金をして棲家を得る 狭いながらも楽しい我が家 と誰が言ったか 大半の人は 建売一戸建て住宅か マン…

欲望その126

謀反を企てている一味と 欲望合戦がはじまった やつらは 缶ビールモニュメントの周囲に ビアホールを完成させた 中は 今流行の屋台風の造りだ 昭和30年代をモチーフにし レトロな雰囲気を醸し出しているが 本質がない 薄っぺらな造作だ しかし 時速300…

欲望その125

サーキットが完成してから 夢御殿の建築に係る具体的な記述がない 欲望は 満たされると一旦は消沈する が しばらくすると 次なる欲望が湧いてくる ところが 今はそれどころではない スタッフの一部が この夢御殿を 乗っ取ろうと謀反を企てている 例のビアホ…

欲望その124

最近 雨続きで 少し うっとうしい と 思う反面 この国が水に恵まれているのは この降雨のお陰だと 思う 人間を含め 地球上に生息する ほとんどの生物は 水がなければ生きていけない 蛇口をひねると 水がいくらでも出てくる という 生活に慣れている私は 水は…

欲望その123

ときに人は 思い悩むことがある このままでいいのか と自問する 生まれてきたからには 生きていかなければならない そして 生きている以上は いつか必ず死ぬ しかし普段は 死を意識して生きているわけではない 明日も明後日も生きていることを前提として 行…

欲望その122

オープンスタジオで制作するゲストはペインターが多い 油絵の具やアクリル系絵の具を使って絵を描いている 絵画制作のプロセスとして ほとんどの場合 余分な絵の具が発生する それをもったいない と言って画面に塗ると絵が台なしになる だから皆余った絵の具…

欲望その121

サーキットのバックストレートに設置した 缶ビールのモニュメントの周辺に ビアホールを造ろう という計画が持ち上がった 私は難色を示している 私のプライベートゾーンから遠いためだ CAD空間だからワンクリックで瞬時に移動できるだろ とスタッフは言う…