欲望その132の5

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書類は この建物の化学構造式 すなわち 平面図だ

美人建築家は それに見入っている

私も その書類を覗き込むと 記憶が蘇ってきた



そうだ! 名前を思い出した パリトキシン! 猛毒なんだ


毒?


たしか アオブダイ っていう魚にあるらしい


で 何で毒なの?


毒と薬は裏返しのようなもので…


薬を飲んで 副作用がでちゃうやつね




顔もいいが 頭もいい

議論できる相手なので 私は話を続ける




そう 同じ物質でも 人によっては薬にも毒にもなる そして

この猛毒をもっているアオブダイにとって

パリトキシンは 毒ではない

そういう相反する事象の境界として 毒を選んだんだ

化学構造式を見ると 閉じた6角形と5角形があるでしょ

それを居室として考える

でも この構造図を見ると 外部と内部が

どちらとも言えない場所がある

そういう曖昧な部分が相反する事象の境界になる

それ以外は 意匠的な扱いをされても仕方がないが

装飾も 建築の一部じゃないか

アールヌーボーやガウディの建築は 装飾が建築を支えている

と言ったら言い過ぎかもしれないが

建築家の芸術的な個性があるから魅力がある

今の建築は目的や機能ばかり優先して

無駄なものを省こうとする

研ぎ取った純粋建築は それもまた

美しいと思うが 一方で 人の創造力を消す

こういう無駄だと思う構造体が

知足りる人にとっては 必要なんだ



理論の展開が少し飛躍したかもしれない

でも 美人建築家は このことを痛感している

しかし 実際 そんなことできっこない

と思っている が 考えている



私のプロジェクトは 言葉の建築だ

現象建築 と呼んでもいい


既成概念は いつだって芸術の邪魔をする

でも 裏返せば 味方にすることもできる筈だ




パリトキシン画像のソース>>>フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%AA%E3%83%88%E3%82%AD%E3%82%B7%E3%83%B3