欲望その132の1

夢御殿に 黒いスーツ姿の女性が現れた
さっそうと歩き 立ち止まっては写真を撮っている

何かを調べているのか
ちょっと気になったので声をかけた

こんにちは いい写真が撮れましたか

振り返ったその顔にドキッとした
きれいだ

私のことを不審に思ったのか 返事もせず
そのまま立ち去ろうとする

ちょっと待って 落し物だよ 書類 君のだろ

と言うと 慌てて戻って来る
簡単な手に引っかかるものだ

私は手を後ろに回した
怪訝な顔をしているが きれいな顔立ちだ

あなた 建築家でしょ と私が言うと
えっ 何でわかるんですか と答える

だって 建築家って みんな同じような
かっこして 同じようなカバン持ってるでしょ
自分は建築家だ って言いながら
歩いているようなものじゃない

あなたには関係ないでしょ
さあ 書類を返してください

書類って何 と言って私は両手を前に出す
手には何も持っていない

どこへやったんですか 私の書類!
と言って 私の背後へ回って見る
でも 何もない

私が歩き出すと 進路に立ちはだかって こう言う

隠した書類を出してください

じゃあ 身体検査してもいいよ と言ってみる
じゃあ 服を全部脱いでください と言う

ここじゃ無理だよ と言うと
どこか脱げるところはないのですか と言う


いったい どれほど大切な書類を持っているのか