欲望その128

夢御殿に彫刻家が訪れ
ここを気に入って 自分の家を建てはじめた

抽象彫刻の作家なので 家も抽象的だ

彼の彫刻作品は 慰霊碑が多い
何となく厳かで 近寄りがたい

彼の家もそんな印象だ
楕円と方形が不規則に組み合わされ
不安定のようだが 重力の法則には合致している

素材固有の色彩を生かし 基本的には彩色しない
石や木などを 削り 彫り かたちを作り出していくので
計画的に仕事を進めなければ 削り過ぎたり
折れたりするのだ

彼は よく失敗する
だが それを家に取り込んでいく
家が 彼の作品でもある

今日も 家の形状が変わった