欲望その130の8

私たちは 互いの名も知らない
でも 今 こうして体を寄せ合っている
こうなる前に 名前くらい聞いておけばよかった
しかし 今更 聞けない
ムードが壊れてしまう かもしれない

名前は 社会的に個人を特定するため
便利な制度なのかもしれないが 男女の仲には必要ない
もはや 言葉さえ不要だ

暗闇に慣れてきた目には
美人スタッフの顔が はっきりと見える
何度見てもきれいな顔立ちだ

互いに相手の唇を貪るように 濃厚なキスが続く
握り締めていた手は 相手の肩に周り
堅く抱きしめ合う

もう 何があっても離れない という思いが
通い合っているようだ

出会ってから まだ数時間しか経っていないのに
こういうことになろうとは と思う一方
何年も顔を見合わせていても こういう状況に
ならない異性もいる

時間の積み重ねによって 恋は生まれない
恋は 一瞬にして陥るものなのだ