欲望その136

夢御殿には 長年咲かなかったスズランがある


今年は花の蕾が出てきたので 毎日 その生育を見守っていた

霧のような細かな雨が降ったとき

傘を差さずに歩く人の姿が多かった


スズランを見ると その葉は微量の雨を受け止め

水の粒を作り出していた


僅かな水分でも 生息に必要な水を葉に留め

少しずつ根に落としていくのだろう


葉というのは 光合成するだけの部位だと思っていたが

水をすくって口へ運ぶ 人間の手のひらのような

役目も担っている のかもしれない


そのことを 可憐なスズランは 教えてくれたような気がする