欲望その108

何度 ヘリに乗っても 浮き上がるときの
気持ち悪さには 慣れない

自分で操縦すれば また違うのかもしれないが
重力に反して 垂直に上がるときの
頼りない感覚が 不自然極まりない

私は 陸海空と言えば 陸が好きだ
四輪を踏ん張って コーナーを駆け抜ける
そこに 悦びを感じるのだ

こうしてVVIPの付き添いや 火急の用で
仕方なくヘリに搭乗する以外は
自ら進んで乗ることはない


ある程度の高さまで 垂直に上がると
ヘリは前に少し傾き 進んでいく
サーキットのコースがすべて見渡せる

おや コース上で煙が上がっている
ヘリに無線が入った コントロール・ルームからだ
煙の発生地点へ駆けつけろ という指令だ

空の散歩は中止だ

煙の現場へ駆けつけ 唖然とした