産道の記憶

子どもの頃 高熱を出して寝込むと 必ず見た夢は

赤くうねうねとしたベルトコンベアーのような物体が 形を変え流れて続けて来る中で

ただ苦しみを感じて…





大人になってから その夢は見なくなったが その話をしたら ある人はこう言った

「それは産道を通った時の記憶だよ その記憶がある人は結構いるみたいだよ」





それを聞いた私は「なるほど」と思ったが 今になって考えてみると不思議な疑問が湧いた





私には 確かな視覚的な記憶があった 今でもそのビジュアルは思い出せる

しかし 私は目を開けて生まれて来たのだろうか?

仮に 目を開けて産道を通ったとして 光がないのに見えるものなのだろうか?





少し前の話だが 私が電飾スーツを着ていた時 盲目の人が私のスーツに取り付けられたLEDを触り

「光っているのが分かる」と言った

光は眼だけでなく 指先などでも感じるものかどうか疑問は残るが…





そして思ったのは 瞼を開けなくても光を感じること

例えば日光浴をして目を閉じていても 瞼の裏が赤く見える

でも体内に光は… と考えて はっと思った





瞼の裏に光が届くように 産道の中も僅かながら明るいのではないか?

その僅かな明るさで 私は瞼を閉じていても 見えていたのかもしれない…と