今月の伝道標語

今夜はBankARTでのオープンスタジオのパーティーへ行くため電車で出勤

最寄の駅まで總持寺の境内を歩いて行く

今月の伝道標語


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比の帰依仏法僧の功徳
必ず感応道光するとき
成就するなり

『修証義』第三章


六月十三日が、今年から「はやぶさの日」に認定されたそうです。

二〇〇三年五月九日に旅立った小惑星探査機「はやぶさ」が、その後小惑星イトカワ」に着陸し微粒子を採取、二〇一〇年の六月十三日、ついに地球に帰還しました。一時は行方不明になるなど数々の障害を克服し、諦めることなく工夫を重ね、ついに帰還をなし得たのです。気の遠くなる距離の往復に成功した要因は、地球上で待つ宇宙科学研究所ISAS〕スタッフの尽力と、新たに導入された長距離移動に適した新型エンジン・イオンエンジンの推進力です。

無限に広がる宇宙の中、困難を乗り越え、只一筋の軌道を必死に辿りながら任務を果たした「はやぶさ」の姿に、自らの理想の生き方を重ねた人も多かったはずです。

二千数百年前に、インド・クシナガラに於いてお亡くなりになられたお釈迦さまは、その後の世界に宝を残されました。それは、特別なご利益や奇跡ではなく、ご存命中に我が身の行いを持ってお示しになられた、仏として歩むべき道筋です。

その道筋は今現在《帰依三宝》として伝えられています。帰依とは信じ拠り所にすること。三宝とは仏法僧、つまり、帰依仏‐仏としての行いを人間の世に現されたお釈迦様に習い信じること・帰依法‐お釈迦様のみ教えを学び信じること・帰依僧‐お釈迦様に習い、み教えを学ぶ者たちを信じること、以上の三つです。

この帰依三宝は日本のみならず、全世界の仏教徒が必ず最初に信じて大切にする共通の誓いなのです。

大本山總持寺の日常生活は、仏の行いに適うべくこと細かに決められています。それはお釈迦様が示され瑩山禅師が調えられた道筋です。この道筋に沿って百人を越える修行僧の日々精進する姿があります。

大本山の中での生活は、一般日常の生活とはかけ離れ個人の勝手は認められません。あくまで仏の行いを皆で行じていくのです。初心の者はその生活に慣れず合点がいかないものです。それが年数をかけて行じていくとき、自ずと徐々に合点がいくこととなります。単に慣れただけではありません。それは修行生活が道理に適い、歩む道は確かなものである、と実感するからです。その実感は、お釈迦様や、そのみ教えを伝えられた瑩山禅師が得られたものと同様です。仏祖と実感を共有すること、それを「感応道交」といいます。この「感応道交」することが、益々修行に励む推進力となります。この推進力がある限り、いずれ、二千数百年前お釈迦様が悟られ瑩山禅師へ伝わった仏法という宝を採取出来るのです。「はやぶさ」のイオンエンジンは気の遠くなる宇宙空間を往く推進力がありました。当然イオンエンジンは特殊技術であり真の凄さを味わえるのは専門家のみです。対して、仏の道が確かなものであるという、仏祖と共有する実感〔感応道交〕は、二千数百年の時間を越える推進力となります。そしてその実感は、三宝に帰依し仏の行いを習うならば、どなたでも味わえるのです。

はやぶさ」に思いを馳せながら夜空に浮かぶ天の川や無数の星を見上げ、一度大きく深呼吸してみてください。そして目線を地平に移し、今日も坐禅修行なされるご本山の修行僧にならい、呼吸を調えてください。呼吸を意識し調える事、これが己の歩むべき道筋を見極めるきっかけになるかもしれません。

平成24年7月 ( 清水(せいすい)寺住職 蔵重 宏昭)