欲望その60

テレビコロシアムのゲストは
もうログアウトできただろう

美術館のテラスで お茶を飲んでいる頃だ
すがすがしい顔で 他のゲストと
ここまでの苦労を語り合っているに違いない

しかし 同じ道を通って来ても 感じ方はそれぞれだ

さて 夢御殿の美術館は トリックあり 迷路あり と
まるでアミューズメントパークだ
本来の美術館は そうあるべき ではないか

何が描いてあるか わからないような絵を並べて
これは芸術です と言ってみたところで
大多数の人は ? と思うに違いない

芸術を理解できない奴だと思われたくないから
観衆は 学芸員の解説を聞き 首を縦に振る

そして 作品ではなく 解説を覚えて帰るのだ
観衆は 自分の能力で観ることができなくなってしまった

こうした傾向は 美術館の経営に起因する
観客動員数を確保するため
観衆に受け入れられそうな芸術を見せなければならない

適度に難しく だが 少し説明すれば理解を得られる作品
もしくは 既に評価が固まった古典 または
海外の有名美術館のコレクションを借りてくる
さらに テレビなどに出演し 顔や名が知られている
タレント作家の展覧会を開く
そういう ふやけた作品 が流通しているのが現状だ

本来 先駆的な芸術は それが誕生したとき
大多数の観衆に理解されなくてもよい のではないか
たとえば 科学の最先端技術を支えるその理論は
われわれ一般人には難解であるように

ゴッホは 生きているとき 評価されなかった
時が経ち 今や彼の作品は 高値で取引されるようになった