欲望その22

開いていく壁の向こうから目にとびこんできたのは 赤 だ
一面が 真っ赤に塗られた部屋のようだ
中へ入ってみる と 壁が閉まる

真紅というのか 純色の赤というのか
床・壁・天井に規則正しく埋め込まれた照明に照らされ
鮮やかな赤が美しくも見えるが 落ち着かない

色彩が与える心理作用なのだろうが
興奮してくる

一面赤の部屋に住む人は 多分 いないだろう
いつまでもこんなところにいると 気が変になりそうだ

出口を探す

壁を一巡してみてもEXITの表示は見当たらない
床と天井もくまなく見て回ったがボタンや表示はない
よく見ると天井の四隅に何やらセンサーらしきものが付いている

入ってきたところの壁を空けようとしてもビクともしない
反対側に出口らしき部分があるが 押しても叩いても開かない

もう一度 壁・床・天井を くまなく見る
しかし 見れば見るほど 赤一色でおかしくなりそうだ

そうだ! と思い「開け~ゴマ」と言ってみる

何の変化もない

どこかに隠れアイテムがあるのだろうと思い
壁を押して回ってみるが 何も起こらない
床も隅から隅まですべて小刻みに歩き回って踏んでみる
出口は開かない

興奮が高まり思わず「×××」と叫ぶ

耳が痛い

少し考えようと思い 部屋の隅に腰を下ろし壁にもたれかかった

これはアートか

分かれ道を左に行ったらどうなっていたのか

という思いが脳裏をよぎる
さあ どうやってここから抜け出すのか と考える
まさかここに閉じ込めておくつもりはないはずだ
きっと監視員がカメラで見ていて 頃合を見計らって開けてくれるのだろう

電子音が鳴りはじめた
ビクットして体を起こした と 音が鳴り止んだ

何だ? 何もしていないじゃないか と思って また壁にもたれかかる
ため息をついて ボーッとする と 再び電子音が鳴り始める
今度はジッとしている すると電子音の鳴る間隔が短くなり 連続音になると同時に壁が開いた

そうか 動き回っているうちは扉が開かないのだ と思った
動いているときは見えないものも 止まると見えてくるものがある
進むばかりが能ではない ときに止まって振り返ることも必要だ

急いで出口へ向かった