欲望その30

多分 赤や緑の部屋と同じ大きさなのだろうが
この白い部屋は僅かだが広く感じる
明るい色は 膨張色といって 大きく感じるものらしい

私たちは 無意識にそういうものを求めてきたのかもしれない
洞窟で暮らしていたときは 壁は白ではなかっただろう
狭苦しい都市に暮らし 少しでも広がりを求めるがゆえ
白を基調色とするようになったのかもしれない

部屋の中をよく見ると いたるところにEXITの表示がある
それはエンボスになっていた

これまでの部屋もそうだったが EXITの表示に触れたとき微妙な凹凸があった
それは 点字だったのか と思った

このうちのどれか もしくは全部 が壁を開けるセンサーだろうと思う が
何か仕掛けがあるかもしれない ので考える

考えてもわからない ので片っ端から触れていく
すべてに触ってみるが 何の変化もない
時間差で開くのか と思って少し待つが壁は開かない

何か組み合わせがあるのか
順序があるのか
ひとつなのか 複数なのか

たくさんある選択肢の中からひとつを選び出すというのは難しい
どれも合っているようで すべて間違っているようでもある

そうだ 答えはひとつではないのだ
人それぞれに答えがあり
自分が信じることを実行すればよい

これだ と思うEXITの表示を力強く押した

壁が開いた