欲望その102

今日は原付レースが行われる
原付とか原チャリとか言うが 正確には
原動機付自転車 と言う
総排気量50CC以下のエンジンを搭載した自転車だ

レースに参加する条件はふたつ
1) 参加車両は市区町村が交付した標識を付けた原動機付自転車であること
2) 参加者は主婦(夫)であること

このレースは 宣伝などしていないのに
続々と参加者が集まってくる
300台以上あるだろうか
主婦の口コミで広まったイベントだ

ほとんどが無段変速ATのスクータータイプだ
買い物帰りらしく かごにスーパーの
袋を入れたままの参加者もいる

なぜ このレースが これほど人気があるのか と言えば
優勝者にはデパートの商品券10万円分が贈呈される からだ

スターティングのグリッドラインは無意味だ
先着順にコースへ出て ポールポジションのラインに並ぶ
皆 少しでも前へ進もうとする
割り込みは当たり前だ

全員がコースへ出ると 一斉にスタートだ
主婦の熱い戦いが始まった
3時間の耐久レースだ

はじめは 団子状態だ
レースでは スタート直後によく事故が起きる
そんなに近づいて接触しないか と心配するが
皆 うまいこと走って行く

60km/hでリミッターが働くので 遅いレースだ
昔の原付は11500rpmで90km/hは出た
わずか50ccのパワーユニット
信じられない動力性能を生み出す
しかも燃費がよい

レースは中盤になると 徐々に差が開いていく
そして 給油をしなければならないため
ピットインのタイミングや給油の上手下手で順位は逆転する

レースの後半になると出走台数が減っていく
ピットロードに入って そのままサーキットから
出て行く原付が目立ってくる
順位が後ろの方の参加者は 優勝を諦め
レースを放棄し 家に帰る
夕飯の仕度をしなければならないのだ

レースも終盤となり1位を走っている原付が
そのままゴールとなる と思いきや
マフラーから白煙が出はじめ 速度が低下した

原付をフルスロットルで 3時間走らせるのは
マシンにとっては かなり過酷だ
いくら エンジンがよく 耐久性もある
日本製のバイクと言えども 整備をしないと不調になる

原付はメンテナンスフリーだと
勘違いしている主婦もいて
オイルやバッテリーを交換せず
何年も乗っていることがある

1位を走っていた原付はオイルが減って
エンジンが焼きついたようだ
そのすぐ後を走っていた2位が
チェッカーフラッグを受けた

勝負は最後の最後まで わからないものだ

表彰式に参加する者は優勝者ひとりだけだ
参加者は全員帰ってしまった
優勝者も商品券を受け取ると 足早に帰って行った