欲望その116の4

ドアを開けると そこは寝室だった

私はシャワーを浴びていない と思いながら部屋に入ると
スタッフはベッドの中から こう言った

そっちの扉から先に進んでいくと
さっきのクロークへ着くから
上着を忘れずに持って帰ってね
それと 部屋の電気は消してってね
あと 玄関のドアはホテル錠だから
開けたらそのまま出て行って平気よ

人を招待しておいて 一体どういうつもりなのか
と思いつつも 夢御殿のスタッフなので
肉体関係はない方がいい と自分に言い聞かせる

パソコン室とクラブのような部屋の照明を消し
寝室に入るとラベンダーの香りが微かに漂う
フットライトの灯りを頼りに部屋を横切る

反対側のドアを開け 振り返り
客間はないのか と聞く
一応あるけどぉ と眠い声が返ってきた

茶の間はあるのか と聞くと
何それぇ と あくび声で聞き返す

仏間は と聞くと 返事がない
寝つきがよろしい
寝るためだけの目的の部屋だから か

私は おやすみ と言って次の間へ入り ドアを閉める
ドアの横にある照明のスイッチを入れると
そこにはキッチンがあった
カウンターの上にコーヒーメーカーがある
ここで朝食を摂るのだろう と思った

この部屋も 目的がぼけている と思ったが
当の本人はログアウトしてしまったので
敢えて 指摘しない

シャッターが閉まった窓があるが
きっと中庭が見えるようになっているのだろう

反対側のドアのところにも 照明のスイッチがある
どの部屋のスイッチも3路式になっているようだ
キッチンの照明を消し ドアを開けて次の間の照明を点ける