雨のドローイング 誕生秘話

この1年間・・・ 絵画について 思いを巡らせていた



絵画とは何か
人はなぜ絵を描くのか
何のために 誰のために



私は 絵を描きたいか
絵を描くとしたら 何を描くのか





ある日 銀座の画廊を見て回って帰宅する時
昔よく行った画材屋に立ち寄り 紙を2枚買った

家に戻り 早速フロッタージュをしてみたが
当初 脳裡に思い描いたように仕上がらない

かれこれ何十年も ドローイングから遠ざかっていたため
当然かもしれない

しかし 技法はよく覚えていた・・・ まず下地を作るのだ



そこで 失敗作に墨汁を垂らし刷毛で塗り伸ばしてみた
が 気に入らず 外へ持ち出し 洗い場で墨を洗い流した

紙は フロッタージュの強い筆圧にも耐えられるよう
厚い水彩紙を選んで買ったので
それ位いじめても ふやけたり破れることはなかったが
元の白さには戻らなかった



とりあえず 玄関ポーチのタイルの上に置き
墨汁を少し垂らしてみると 墨汁が自然と広がり
その無作為な形態が面白かったが それにも増して
私を感動させたのは 降っていた雨がポーチに吹き込み
墨の広がった黒い部分に 白く雨粒の跡を付けたことだった



これが 雨のドローイングの始まりだった



以来 雨の日になると 私は紙と墨汁を持って外へ行き
雨のドローイングに取り組んでいる

枚数を重ねるうちに 私は手の痕跡を出来るだけ排除するため
ある道具を使って墨汁を紙に蒔く方法を考えた



さらに枚数を重ねていくうちに ある時 落ち葉が紙に付き
その痕跡が面白かったので それ以来 葉や花びらを紙に置き
ドローイングをしている

イメージ 1


墨汁と雨に当たった葉や花びらは 一旦 ドローイングから取り除き
乾燥させるため 1週間程度押し花(葉)にし 元のドローイングに貼り付ける





この制作に取り組むようになってから 私はそれ以前と比べ
自然に目を向けるようになった気がする

落ち葉を拾い また雑草を摘み わら半紙に挟み
押し花(葉)を作り 雨に備える日々

先日参列した結婚式で戴いた花が今朝散ったので
それも予め ある程度水分を抜くため 押し花にしておく

イメージ 2


雨が降ると 私は深夜早朝を問わず 起きて外へ出る


植物の破片を紙に置き 雨の降る屋外へ出し
微風の方向を肌で感じながら 墨汁を投下する

雨足には強弱があり その時々の降り方によって仕上がりが異なる



どの位 雨滴に曝すか



その頃合は私の判断であり 作為性は消し去れないが
紙をポーチに引き入れた後も 紙の上で雨粒が干渉し合い
にじみ 広がっていくので 人工的な手の痕跡は薄まる



その作業は 私にとって自然体で行っているような気がする



コンセプトや意図を元に制作するのとは明らかに違い
遺伝的に持っている何か 自分でもよく分からない欲望が
そうさせているように思う