9) 箱との出会い

自分の仕事 自分の作品が見い出せないまま 時間だけが過ぎていった
版画専攻へ移った同級生は 版画の技法・材料を初歩から学んでいたので楽しそうだった

私も版画専攻へ移ればよかったかな?と思ったが 考えた末
油画専攻に進むことを決めたので もう後戻りすることは出来なかった

油画専攻とは言え 何をやっても良いのが油画専攻だった

当時 BT(美術手帖)や西武美術館が現代美術を大々的に紹介していたので
コンテンポラリーな作品に憧れた

大学帰りに 神田や銀座の画廊へ通い 何か自分に役立つものはないか
と貪欲に見て回っていた時 私の人生に多大な影響を与えることになる作品と出会った



それは銀座7丁目にあった鎌倉画廊でのマンゾーニ展だった
小さな箱に綿が入っただけの作品に 私は深い感動を覚えた

私はさっそく箱を作り 中にオブジェを入れてみた
ありふれたオブジェが小さな箱に収まっただけで作品と化す便利なメディアだと思った

私は箱の魅力にはまり その後8年間 箱の作品を作り続けた

イメージ 11984年制作の箱作品「無題」(作家臓)