油絵通信講座(その5 姿勢)

私は 何事をやるにしても 姿勢が一番大切だと考えています

姿勢は身体的なものと精神的なものがあり 互いに作用し合うと思います

姿勢を正せば 真剣に取り組もう という気になりますし
真剣に取り組もう と思えば自ずと姿勢も良くなります

絵を描くとき 静物画を例にすると 自分と画面とモチーフと道具の位置関係に気を配ります

まず 自分自身は画面に真っ直ぐに向かいます 並行と言ったら分かりやすいでしょうか
そして 画面の高さは自分の目線よりやや低いのが描きやすいと思います

イーゼルは倒れない程度で画面がなるべく垂直になるようにします
もちろん 画面が水平になるよう イーゼルを調整します

自分と画面の距離は 筆を持った腕を真っ直ぐ水平に延ばし 画面に届く位の距離を取ります
近すぎても 遠すぎてもいけません

モチーフを見る時は 自分と画面の位置関係はそのままに 目だけを動かすようにします
そうするためには モチーフが画面で隠れない程度に 画面をモチーフに寄せます
距離ではなく 左右の位置関係です

そして モチーフを見るときは背筋を伸ばし モチーフのどこか1点を決めて
そこがいつも同じように見えるようにしてから 視線を他に動かすのです

そうすることによって モチーフはいつも同じ状態に見えるため 形が狂いにくくなります
描いているうちに段々と姿勢が悪くなるので 絶えず意識して背筋を伸ばします

それから 座るイスの位置にも気をつけます イスの位置が少しでもずれると 形が狂う原因です
例えば 右目だけで見るのと 左目でだけで見るのとでは 物は違って見える筈です

それくらい微妙な視点の違いで 物は違って見えてしまい形が狂います

パレットは手に持たず 自分の膝頭辺りにくるように台の上に置くと使いやすいです
絵の具 筆 ペインティングナイフなどは 手が届く範囲に整理して置くと効率が上がります

油絵の具は垂れて床に落ちたりするので 床を汚したくなければブルーシートを敷いた上に イーゼル イス 道具類を置けば良いでしょう

それでは モチーフを良く観察して 見えたものを見えたままに描きます

ディテール(細部)が良く見えなければ 席を立ってモチーフに近づいて見てください
極端なことを言えば 拡大鏡で観察しても良いのです

面倒くさい と言って模様やしわを省略してはいけません
これは心の姿勢の問題です

絵を描くのは楽しいことかもしれませんが 楽をしてはいけません
緻密な手作業の積み重ねが大事なのです