画風の研究

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横浜の予備校で困ったのは モチーフのつまらなさだった

サッカーボールや消火器がよく登場し

それをまともに描いても絵になりにくい


困った挙句 消火器をビルに見立て 背景の空を

黄色から緑色のグラデーションに塗った

キリコの画風を引用したのだ

形而上絵画…


その絵を描いているとき

同じアトリエの浪人生たちは目をまん丸にしていた

そして私のことを ついに気が狂ったか と コソコソ と話している


講師がアトリエに入って来た

私の絵を見て キリコですか? と聞いた

私が黙って頷くと ニコッとして行った

懐が深い と思った


消火器と言えば 講師がモチーフをセットするとき

誤って噴射してしまったことがある

その消火器はモチーフ用に使っていたもので 相当古く 泡消火器だったため

モチーフが泡だらけになってしまった

この出来事は 後に私の行動に影響を与えることになった


さて キリコの画風を引用したあと

私は 個性ある絵を描くため いろいろな画風を模してみた


ブラシを使ってスーパーレアリズム風に描いたり

コラージュやポップアート風の絵など

当時 日本に紹介され始めた 前衛美術の画風を 次々に模して絵を描いていった


しかし そうした絵は一見奇異に見えるが

単なる模倣にしか過ぎず 私の個性にはならい と思った



Chirico, Giorgio de “Hector and Andromache”
画像のソース http://www.paletaworld.org/artist.asp?id=1899