欲望その82

そこには 大きな車輪のような物体が
所狭しと並んでいる
どれも同じ 金網のような素材でできている

それぞれに扉がある
機械の中へゲストがひとりずつ入れられ
外から鍵を掛けられている

私は躊躇した こんなことは望んでいない
係員に言った

あのぉ 私は 中へ入るのは遠慮します

何をおっしゃっているのですか
お客様がお選びになってここへいらしたのですから
どうぞご遠慮なくお入りください

私は選んで来たわけじゃないんです

そんなことを言わずに さあ
後ろの方のご迷惑になりますから お入りください


後ろを見ると長蛇の列ができている
仕方ない 皆と一緒なら まあいいか
入るだけだぞ と言って進む

これはマウスやリスの檻にある滑車と同じだ
それを人間用に大きく作ったものだ

係員は次々とゲストを滑車の中に入れ 扉を閉めていく
ざっと見て300個くらいはあるだろうか

周りを見渡すと 部屋のつくりは檻のようだ
ペットの気持ちにでもなれ と言うのか

全員が滑車に入れられるのを待たされる
少々時間がかかる

皆 嫌じゃないのか

結構楽しそうに入っていく
もう回し始めている奴もいる

私は滑車の中で座り込んだ
少し揺れている