欲望その83

ゲストの全員が滑車に入ったようだ

アナウンスが流れた

皆様 夢御殿へようこそ
この作品は 超越 と題する体験型アートです
はじめは歩いて 回してください
歩調を速め 勢いがついてきたら走ってください
ただし 転ぶと大けがをしますから
ご自分の体力に合わせて加減してください
皆様が 滑車を回すことができれば終了です


何を言ってるんだ 私は絶対にやらんぞ
ねずみみたいに回れるか
ひとりくらい やらなくたって わかりゃしないだろ

次々に人を捌いていかなければ 運営できないだろうから
時間が経てば開けて 外へ出してくれるに違いない
それにしても 皆よくやっているよな
こんなことをされて 疑問をもたないのが不思議だ

5分くらい経ったとき アナウンスが流れた

皆様 そろそろお時間ですので 速度を緩めてください
急に立ち止まると 転びますので
段々と ゆっくり走るようにしてください
係員が順に開けて行きますから しばらくお待ちください

そぉれ見ろ 言ったとおりだ
最初に入ったあいつから扉が開けられ
出口へ誘導される

私の前を通り過ぎるとき ちらっと横目で見られた
先に自由になって 優越感を感じているのだろう
私は知らぬ顔をした

私の隣の滑車が開けられゲストが出て行く
体を動かしたせいか 外に出られたせいか わからないが
顔が活き活きしている

さあ 早いとこ開けてくれ
おっと 通り過ぎるなよ 次はここだろ