欲望その6の1(孤島の美人歌手)

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何だ陸地か・・・ 時化で打ち上げられたんだなー
どこかなー ここは・・・えーと ナビ ナビ・・・
むむっ ここは島じゃないか・・・でも あまり大きくないなー

私はハッチを開けて外へ出た きれいな砂浜だったので
船底のガラスは ダメージを殆ど受けていない

これなら直さなくても大丈夫・・・さて コーヒーでも飲むか
ん? 歌声? なんか懐かしい曲だなぁ
どこに?・・・あ いた いた

「おーい!」

「♪あなたを思い出す この店に来るたび 坂を登って♪」

「聞こえないのかな おーい!」

「♪今日も来てしまっ♪ え!何? わー! 誰あなた!」

「すいませーん 嵐でここへ打ち上げられちゃったんです」

「ああ 夕べはすごい時化だったからねー 大丈夫?」

「ええ 何ともありません」

「あなた1人で来たの? 乗組員 いないの?」

「ええ 私1人・・・ あなたは ここに1人で住んでるんですか?」

「違うわよ 旦那と息子と3人暮らし」

「そうですか・・・それで えーと いい声ですね 歌手なんですか?」

「あら ありがと! そうよ ミュージシャンなの」

「へー シンガーソングライターなの?」

「旦那はね・・・私は歌とベースと ギターをちょっと」

「夫婦で音楽活動ですかー いいですね! バンド名は?」

「WAVE って言うの・・・知ってる?」

「知らないなー」

「そう! じゃあ この機会に覚えといてね」

「どんな曲なの?」

「あとで聴かせてあげるわ・・・うちへ来る?」

「ええ お邪魔でなければ・・・」

「じゃあ 案内するわ こっちよ」

「どうして ここに住んでいるんですか?」

「誰にも気兼ねなく 音 出せるでしょ」

「あー 音楽する人は そうだよねー」

「それと この島 きれいだから」

「うん すごく きれいな島・・・ 夢御殿にこんなところがあったとは」

「え! 何? 嫁御殿?」

「違うよ ゆめごてん!」

「何 それ?」

「私の『住』の作品」

「作品? あなた 作家さんなの?」

「そう 一応 アーティスト」

「アーティスト? 音楽の?」

「違うよ 現代美術です」

「ああ 難しいやつね コンセプチュアルとかミニマリズムとか」

「よくご存知ですね」

「それくらい 知ってるわよ 息子はクリエイターだから」

「芸術一家なんですねー WAVEさんは」

「私は 愛っていうの・・・ あなたは?」

「私? んー いろいろ呼ばれているけど・・・本当は じゅん っていうんです」

「えっ! うちの旦那と同じじゃない 紛らわしいわね」

「じゃあ イドって呼んで下さい」

「井戸~? それ変じゃない?」

「じゃあ 御殿とか・・・」

「何それ! ああ 夢御殿だからね」

「そうです あとは殿とか・・・」

「殿って感じじゃないわね そうねー 夢にしたら・・・ねっ 夢さん」

「じゃあ ここでは そうします」

「何よー 不服?」

「いえ いい名前ですね・・・」

「夢さん ほら あそこ! あれが私たちの家!」

「えーーーーー! あ あれですかぁ・・・」





WAVEのウェブサイト>>>http://www.geocities.jp/starrecordsonline/index.html

歌詞:「海を見ていた午後」荒井由実作詞

画像©Kou, Hateruma:美ら島物語 ”Beach Essay”
>>>http://www.churashima.net/photo/beach_essay/006.html