欲望その6の3(補強)

「えーっ! そうなのー 知らなかった・・・」

「じゃあ 自分でやらないとね」

「何を?」

「補強工事だよ」

「でも 建築会社の人は大丈夫だって・・・」

「大丈夫じゃないから クラック入ったんじゃない!
 中もクラックが入っている筈だよ 気付かなかった?」

「えーと そういえば あそこの当たりを歩くと床がギシギシ鳴ってたような・・・」

「もう限界だね 早いとこ補強しないと」

「どうやって?」

「手っ取り早いのは あの跳ね出しの先端の下に柱を立てて・・・」

「えー それ みっともないわ」

「何 言ってんですか! あの根本から折れちゃうよ」

「ええっ それは困ります あそこには 大事なピアノが置いてあるんです」

「仕方ないでしょ 他に方法が・・・ん! 待てよ」

「何?」

「いい方法があるよ ちょっと待ってて」

「え? どこへ行くんですか?」

「すぐ戻ってくるよ」

「それまで 崩れませんかぁ?」

「わからなーい その下にいたら危ないからねー 離れててぇ」

「早く 戻ってきてくださーぃ」

「わかったぁ」


私は漂流住宅に戻り スイッチを入れた
バランス装置を動かすことにより 巨大なガラス玉は陸地を転がる
そして 愛さんの家へ向け舵を切った

もうすぐだなー あー 見えた 見えた おーおー 愛さん驚いている


「お待たせー」

「わわわわわ な なに その巨大なガラス玉は」

「私がここへ乗ってきたやつだよ」

「船じゃなかったのぉ 座礁したって」

「浜に打ち上げられたんだよ 嵐で流されて」

「そんな 大きなガラス玉で 海を漂ってたの」

「意外と 安定しているんだ」

「それで それを どうするって言うの まさか・・・」

「そう そのまさかさ」

「キャー ちょっとぉ 何すんのよぉ」