欲望その7の10(MCエッシャー)

「ばかでかい、白い灯台のような建物がワタシの住まい・・・
 しかし、近づいてみるとその建物の中は・・・」

「何?」

「まるでエッシャーの絵のような不思議な空間」

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「無理だよー」

「御殿さーん あれもこれも無理やって トーンダウンしちゃうよー
 これ ファンタジーでしょ!」

「違うよ・・・言葉の建築」

「何 言うとんの?」

「んー つまり 言説空間は無限だから そこに言葉を組み立てていく・・・」

「余計 わからん」

「一応 私の中では座標とレイヤーとベクトルで定義されているんだ」

「何言うとんのか さっぱり わからへん・・・」

「じゃあ 例えば 500年前 人は空を飛べるとは思っていなかった
 でも 鳥のように空を飛びたいと思った人が飛行装置を研究していた」

「それ ダ・ヴィンチのこと?」

「そう・・・ 当時としては夢物語」

「でも 今は誰でも飛行機に乗って飛べるってこと?」

「そう 理解早いねー・・・じゃあ 今から500年後を想像できる?」

「そんなん 無理や それに生きとらん」

「だから関係ないって言うの? まあ そうだよね 死んだら終わり」

「また アホなこと言ってぇ」

「今では想像できないようなことが 500年後には実現してるんだよ 多分
 反重力装置だって 宇宙旅行だって もしかするとタイムマシーンなんかもね」

「そ そうかなー・・・」

「鳥のように空を飛びたい というのは人間の欲望・・・
 欲望というのは創造を生むんだよ
 今の私は欲望を書き綴るだけ でも それがいつか実現すればおもしろい」

「今の時代に受け入れられなくてもいいの?」

「ああ まったく関係ない 私は自分の思うがままに生きていく」

「変人だと思われてるかもよ」

「一向に差し支えない」

「強気ねー どこから来るんや その自信?」

「自信というより 開き直りかなー」

「あー 誰にも評価されないからねー」

「またー・・・でもね ゴッホもそう このドームの考案者
 バックミンスター・フラーもそう・・・
 生きているうちに認められない奇才もいる・・・」

「御殿さんも そうだって言うの?」

「わからないけど 売るための努力や説明はしない・・・
 やろうと思えば芸人になって 顔や名を売れば作品も売れるだろうけど・・・」

「けど?」

「今はしない」

「こうやって 夢御殿 書いてるだけでいいの?」

「そう これでいいの・・・一応 これは建築と美術と文学に跨(またが)る作品だから」

「それをつなぐキーワードが 欲望?」

「そう・・・だね」

「だったらさー さちの欲望どおりにしてよ ドーム」

「どんな?」

「えーと まずガラスを透明な膜にして フレーム外して
 土地はサッカーグランド大にして 芝生ね!
 それから 羊さんがいて・・・
 透明な膜は大きなスクリーンにもなって
 映画やプラネタリュームを上映できてー 音も出て・・・
 そう 波の音や鳥のさえずりを心地よい音色に変えて
 私を安眠におとしてくれる! どお?」

「それが 宙に浮いたり 深海まで潜るの?」

「そうや」

「羊と一緒に?」

「もちろん」

「で 白い大きな灯台の中は エッシャーのように空間が捩(よじ)れてるの?」

「無理?」

「んー そこだけは 私の建築的なこだわりから外れるんだよなー」

「この球体 建築物じゃないって前に書いてあったけどぉ」

「土地に定着していないからね」

「じゃあ ええやん」

「そういうことじゃなくてー・・・
 そうだ エッシャーのトリック 知ってる?」

「知らん」

「じゃあ これ 見て」


MCエッシャーのオフィシャルサイトへ行き
左のメニュー「downloads」をクリックして
Virtual Ride "Belvédère"の
MPEGをクリック



「スゴイ おもろいわー 3次元にしたら こうなるんかー メモ メモ〆( ̄▽ ̄*)」

「ある1点から見たときだけ エッシャーの描いたトリックが成立する」

「ああ もう ええわー 御殿さん 理屈はー」

「そうだね! 見ただけで感動が伝われば・・・ どう この建築?」

「ちょっと不安定そうやけど おもろいからな! これでええわ」

「じゃあ そういうことで 電話切るよ」

「ちょっと待って 御殿さん」

「何?」

「その膜の球体に 自動操縦装置 付けて こっちへ飛ばしてくれない?」

「ああ いいよ・・・えーと じゃあ 操作は携帯電話で出来るようにするか・・・
 元々GPS付いてるから その位置情報を送る端末と
 小型カメラとセンサーを取り付けて・・・OK!
 さっちゃん電話切ったらiモードで×××をダウンロードしてね・・・
 球体の位置情報が見れるから あとは移動させたい地点を選んで
 チェックマークを入れる わかった?」

「ほ~い!( ̄▽ ̄+)」

「じゃあね」

「御殿さん バイバイ!・・・
 えーと ダウンロードはiモー・・・あー! しもうたぁ ワタシのauだった」





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