茶会の開催趣旨

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私が茶道に関心を持ったのは陶芸からだった。

私は大学で油画を専攻し、小さな箱の作品制作を経て、今では衣を作るようになったが、50歳になったら陶芸をやりたいと常々思っていた。一昨年、50歳を前にして、さて何を造ろうかと考えた時、一服の茶を飲むための茶碗に興味を覚えた。

たかが茶碗、されど茶碗。

茶の湯の道は奥深く、アートと並行して取り組むことは半端になると思い、私は茶道の習い事はせず、茶碗をはじめとする茶道具の探求をする立場で茶の世界と向き合うことにした。

今の茶道界は千利休が確立したとされる侘び茶を継承しているが、そもそも利休はアバンギャルドだった。新たな茶碗や茶室を造り、茶の世界を拡げて行った。

しかし、それは守破離と呼ばれ、伝統や形式を守って学びに学んだ後に、従来の枠を破って離脱するとの考えである。

目先の変わった安易な手法だけでは、茶の道を歩んで来た専門家や経験者の一笑に付してしまうだけだろう。そこで私は茶道界の若手と組んで、伝統様式に則りながら、現代の技術を取り入れた茶の表現をすることにした。

古式ゆかしい日本の伝統的な茶道を承継することはとても大事なことであると思うが、仮に利休が現代の製品や技術を知ったらどのように茶の世界へ取り入れてしまうだろうか?という視点を含め、美術家である私が、私ならではの美学で茶の道を探求し始めたのが「夢幻の茶会」という表現だ。

固定した茶室を持たず、その場その状況に応じて茶席を設え、茶会が終われば儚く消える…

今年は4回の茶会を計画し、1月に「夢幻の茶会 其の一 冬景色」を開催した。茶道の先生方は、美術家が一体どんな茶席を仕立てるのか疑心暗鬼で様子を見ていたそうだが、茶会を開催した後「これなら茶道関係者も呼べる」と仰ってくださった。

私の中では年4回(冬春夏秋)の茶会計画は念入りに組み立てられている。その季節ごとに味わえる最高のもてなしを一人でも多くの人に経験して頂きたいと思う。

抹茶の飲み方、作法を知らないという理由で敬遠しているなら、その場でお茶の先生が教えるので、どうぞご遠慮せず…