意識を高くもつ

浪人して 代々木の予備校へ行くと 最初にコンクールがあった

油絵科の昼間部だけで50人以上いたので 3クラスに分けるための試験だ


モチーフを見て 唖然とした


アトリエの中央に 牛骨と角材がロープで宙吊りにされ

それを取り囲むように ぐるりと一周 座席が並んでいた


それまで 静物画のモチーフは 台の上に並べられている のが当たり前だった

宙吊りになっていると位置感覚が掴みにくい上

モチーフの向こう側に 他の浪人生が見えて描きにくい


上手く描けないと思って描いていると やはり上手くないのだ

私はCクラスになった… そこは下手の集まりだった


クラスに分かれて 絵を描く課題が始った

私はAクラスのアトリエへ行き 皆の絵を見た

手馴れて上手なのに なぜ合格しなかったのか と思った


芸大 美大 は 狭き門だ

Aクラスには 3浪4浪がざらにいた…

何年も受からないのに よく続けられるな と思った


私は家の経済状況で1浪しかできない

来春 受からなければ 働く覚悟でいた


そう 今にして思えば ハングリー精神があったんだ

背水の陣 ってやつ… 恵まれた環境にいると 勝てない…



さて 予備校の新校舎にはギャラリーもあり

その春の 合格者が描いた作品を展示していた

油絵科の3人の講師の作品も並べられていた


そう… 講師は 3人とも 憧れの芸大 出身で…


Cクラスの担当講師の作品を見て ん? と思った

これでも芸大かぁ って感じ…


後日 その講師との面談があった


君は 来年 どこを受けるの? と聞かれたので

芸大一本です と言うと 無理だ と言われた


がんばれっ! 俺が教えてやる! という言葉はない…

そんな 熱意がない講師に着いていく気にならないでしょ!

しかも ふやけた絵を描いて 平気で展示している奴に…



父親からも 芸大なんか受かるわけないだろ と言われていた

確かにコンクールの絵を見るとそう思う が

意識を高くもたなければ始らない でしょうがー


思いを言葉にすることで 意識が高まっていくんだ