欲望その2の4(海一望のしましまハウス)

「大事だからだよー クルマないと ここじゃ生きていけないから」

「しょうがない人ですね・・・」

「で こっちがエントランスで 玄関を入るとホールがあって 正面がガラス張り」

「それで 海が一面に広がっているんでしょ」

「そうそう いいよねー 床は白い大理石を貼って 両脇の壁にはショーケースを作って」

「それじゃ前と同じじゃないですか」

「ああ そうかもねー でも必要なんだよ 小物のコレクションがいっぱいあるから・・・」

「じゃあ 片側だけにして こっちは花を置くスペースにしたらどうですか?」

「んーーー どうかな? 正面のガラスに ガラス製のカウンター付けて置くのはどぉ?」

「海をバックに浮かんでいるような感じですか? それもきれいかもしれませんね!」

「じゃあ そういうことにして・・・ こっちの扉を開けるとリビングルームだね」

「そうですね リビングからも海が一望出来て テラスがあって」

「その向こうがキッチンかな? 料理しながらも海が一望!」

「いいですね♪ キッチンの横にはユーティリティスペースと食品庫があるんでしょ」

「正解! それは前と同じでもいいの?」

「だって使いやすいんですもの・・・」

「そうだよねー 実用的だよ」

「あのー ユーティリティスペースは広めにできますか?」

「ん? 何をするため?」

「お花を生けるんです」

「ああ そうそう お花の先生だもんね じゃあ大きいシンクを入れて・・・と」

「大きいテーブルと花を保存する冷蔵庫も置きたいんですけど・・・」

「じゃあ15帖くらいかな? って それじゃあ しまちゃんの家じゃない!」

「えー 違うんですかー」

「まあ いいか しまちゃんが見つけたんだもんね ここ・・・」

「はい♪」

「で あと必要なのは寝室とお風呂とトイレか・・・」

「来客用のトイレと洗面所は リビングの近くにひとつ造って・・・」

「寝室は別のフロアにして欲しいんですけど」

「じゃあ ホールのショーケースはなくして エレベーターと階段を入れるか」

「えー ショーケースは片側は残して欲しいんですけど 私も小物がいっぱいあるから・・・」

「これ あると便利でしょ あとクロークね 靴とかコートとか入れる部屋」

「シューズクローゼットですか?」

「もっと広い収納・・・ エントランスにあると便利だから」

「いいですねー」

「で その横にエレベーターを・・・ ん 待てよ 岩盤じゃん」

「だめですか?」

「掘るのが大変だから・・・地下に造ろうと思ったけど無理だなー」

「じゃあ 2階でもいいですよ」

「温泉が湧いているのは下だから 下にしようと思ったんだ」

「ああ そうですね 下の方がいいです」

「じゃあ 一部をハングさせて・・・ あの辺までね」

「そこにエレベーターをつくるんですね」

「そうそう 下に行くと 離れに寝室と温泉のお風呂と洗面・トイレがあって・・・
寝室とお風呂からも海が見える」

「それ いいですねー」

「じゃあ 決定ね! 何とか入るじゃん 元の基礎があった範囲で」

「よかったー♪」

「あとね 花を育てる温室をガレージの隣に造りますか? 」

「わー! 素敵!」

「ユーティリティからも入って行けるようにして」

「最高!」

「あと 鳥さんの巣箱をたくさん作って」

「すごい すごい!」

「じゃあ これで完成! ということで 私は行くね」

「えっ 行っちゃうんですか?」

「もう 出来たから・・・ しまちゃんの夢御殿」

「出来たって どういうことですか?」

「ほら 見てごらん 後ろ」

「えーーー! 家が・・・出来てる」

「そう ここは夢御殿! じゃあ 私は行くね」

「あのー・・・」

「なに? なんか足りないものでもある?」

「ええ クルマ・・・ 置いてってもらえませんか?」

「えーーー! クルマってこれ?」

「はい・・・ ないと不便なので・・・」

「しょうがないなー 運転出来るの?」

「はい さっき見てましたから」

「左ハンドルだけど・・・ まあ ここでは関係ないか」

「乗るときはエンジンかけて 少し待つんですよね」

「そうそう 車体が上がるから・・・」

「普段 レバーは走行モードにしておけばいいんですよね」

「そうそう タイヤの絵が描いてあるでしょ」

「ありました」

「一番低いのと高いのは走れないから」

「わかりました」

「それと悪路用のポジションは低速走行でね」

「はい」

「じゃあ これ キー」

「ありがとう!」

「メンテナンスに ちょっとお金がかかるよ」

「大丈夫です」

「家のことと クルマのことで 何かあったら言ってね」

「はーい♪」

「じゃあ またね」

「御殿さん・・・」

「ん? なに?」

「×××××・・・」

「ああ わかってるよ じゃあね」


お花の先生の家を後にして 私は木立の中を歩いた
浜辺へ戻ろうと思ったけど 深緑の森が気持ちよかったから
ゆっくり散策しながら 思慮に耽っていた

本当にあれでよかったのか? あんな寂しいところで
ひとりで暮らすなんて・・・
あー! そうだ セコムを入れておけばよかった・・・