欲望その5の1(漂流住宅 前編)

夢御殿鉄道に飛び乗り ドアの窓から
なおちゃんが追ってくるのが見えた

何か言ってるようだったけど 何だったんだろう?
一通りのことはやったから あとは自分でやるだろう

夢御殿の電車に乗ったのは初めてだ
どこからどこまで走っているのかわからない・・・ただ
今乗った電車は中央駅から海沿いに 西に向かっているようだ

次の駅は・・・静かな海? いいねー

駅に着くと私は電車を降り 海岸へ向かった
潮の香りと 波の音は 私に安らぎを与えてくれる

ここは まだ誰にも開発されていないようだ
いつまでも このまま残って欲しいと思った

そう 当初 海へ来たのは 自分を取り戻すためだった筈だ
そして この波打ち際に住もうと思ったんだ
でも今は ここに定着しなくてもいいのかな と考えるようになった

私は動くものが好きだ クルマはもちろん
自転車 飛行機 ん! 船を造ってみようか・・・

船にはベッドやキッチンやバスルームがあるから
まるで住まいのようだ・・・ 海上を移動する家・・・
そう ボートピープル っていうのもいるじゃないか

浜辺に定着する建築ではなく 船のようにして海上を漂えば
環境破壊とは言われないだろうし ね? しまちゃん
ん? しまちゃんはOK? では さっそく造りましょう

船と言っても普通の船じゃつまらない
建築とも言えず 船とも言えないような形態で 自然の摂理に合ったもの・・・
そう! スフェール(球)がいい

構造はバックミンスター・フラーのドームを利用して・・・
トライアングルフレームを球形に組み立てて 外は強化ガラスだな

沖に浮くブイのように 波間を漂いながら
潮の流れに身を任せて移動していく球形の船 いや 家・・・
漂流住宅とでも呼ぼうか・・・

高波を受けても 球形だから転覆しないし クルッと回っても
内部は常に水平に保たれるように 二重構造にすればいい

では・・・いざ 出航!