欲望その7の4(天文学者の家)

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「大丈夫か!?」

「気を失っちゃったよ どうしよ」

「川の水 かけてやりな」

「そうですね・・・・・・・・・(ポタポタ)さっちゃん! 大丈夫!」

「うーん・・・」

「大丈夫だよ お化けじゃないよ!」

「何? お化けだと?」

「あー すいません・・・ちょっと雰囲気のある建物だから・・・」

「ここへ来る奴はみんな そう思うらしい」

「え?」

「あんた 知らないのか? ここは幽霊屋敷で有名なんだ」

「知らなかった・・・ さっちゃん! 起きてよ!」

「う~~~ん なあに」

「お化けじゃないよ!」

「え お化けって きゃあああああ!」

「あー 騒がしい」

「さっちゃん 大丈夫だよ この人 生きてるから」

「え え え」

「ほら 脚 あんだろ!」

「え あし ある あるわー」

「ったくー ひと騒がせな女だなー」

「何よ 驚かせたのは あなたじゃない!」

「なにぃ!」

「ちょっと さっちゃん!止めなよー・・・すいません 勝手に入って」

「いいんだぜ 別に・・・」

「もう行こ! 御殿さん」

「あんたら 何しに来たんだ ここへ」

「え? 何って 別荘造ろうと思って・・・」

「この家 買わないか?」

「何言ってんの 買うわけないでしょ こんな幽霊屋敷!」

「まあまあ さっちゃん」

「なかなか いい家だぞ」

「んー 確かに おもしろそうな建物ですね・・・」

「何言ってんの 御殿さんまで さ 行くわよ!」

「ちょっと待って さっちゃん 中を見せてもらおうよ」

「時間の無駄よー」

「見るだけでも構わないから ちょっと来てみな」

「何よ その言い方! 客に対する言葉じゃないわ」

「俺は 誰とでも こんな風に話すんだ」

「野蛮ね! まったくレディに対して」

「さっちゃん 私の勉強のためにも ちょっと見たいんだ」

「しょーがないわねー じゃあ ちょっとだけよ」

「ありがと!」

「じゃあ こっちに来な」

「やーね 命令調で」

「これ アインシュタイン塔ですか?」

「よく知ってるな あんた 建築屋か」

「違うわよー この人 アーティスト!」

「アーティスト? ほう 絵描きさんか?」

「ブブーッ! 現代アート! アンタなんかに わかんないでしょ!」

「もう 止めなよ さっちゃん・・・」

「元気がいい ねえちゃんだな・・・まあ 入りな」

「ワタシ 外で待ってる!」

「おー きれいな空間! さっちゃん おいでよー」

「な 何よー 御殿さん ん ん んー」

「どうだ いいだろ?」

「ス ステキ・・・」

「外観とは 全然違うだろ」

「スゴイ ギャップだわ・・・」

「さっちゃん 外観が悪くても 中身がきれいな人 居るでしょ・・・それと同じ」

「あー この人も そうなの?」

「何言ってんだ おまえら」

「あー すいません 私たちも いつも こんな感じで」

「ちっ まあ いいだろ」

「この家建てたの あなたですか?」

「そうだよ」

「でも なんで こんな不気味な外観にしたの?」

「俺はここで 星を観察してるんだ・・・
 きれいな場所だから 回りに人がたくさん住むようになると
 夜空が明るくなって 星が見えなくなるから」

「だから 変わった建物造って 幽霊屋敷の噂を流したの?」

「ああ」

「御殿さん この人 結構いい人かも(見た目悪いけど)( ̄m ̄;)ppp」

「あの上は どうなってるの?」

「天体観察する場所だよ 行ってみるか?」

「ええ お願いします」

「星の写真がたくさん あるのね」

「今まで撮った写真だ きれいだろ」

「ええ あなたは天文学者なんですか?」

「まあな」

「この家 手放す理由は何? 観測に必要でしょ?」

「もう 止めようと思ってるんだよ」

「天体観察を?」

「ああ・・・ 俺はなー 新しい星 見つけて 俺の名前を付けたかったんだ」

「で?」

「もう 諦めた」

「へー そんな簡単に諦めちゃうんですか?」

「もう 何年もやっているんだが 無理だ」

「でも 新しい星を発見するのって たいへんなことだから・・・」

「まあ 趣味でやってる方が 気が楽ってもんだ
 星を観るのは いいぞ! ほら ここが観測所だ」

「スゴイ! 大きな天体望遠鏡・・・」

「観たいか?」

「ええ ぜひ!」

「じゃあ ちょっと待ってろ」

「あー ドームが開いてくー」

「本格的ですね」

「まあな」

「ねえねえ こんなに明るくて 星 見えるの?」

「もうすぐ 夕暮れの空に 金星が見える」

「え? もう そんな時間!」

「何か用事でもあるの? さっちゃん」

「パーティがあるのよ」

「何時から?」

「8時」

「じゃあ まだ大丈夫だよ」

「おい 見えるぞ こっち来てみろ」

「もう少し やさしく言えないのかねー」

「ほら ここから観てみろ」

「はいはい えーと ああ 見えますね あれ金星なの へー スゴイスゴイ」

「ねえちゃん そんな投げやりな言い方ねえだろー」

「ねえちゃんはやめてよ・・・まったく下品なんだからー」

「お嬢さんには見えねーよ」

「何よ! アンタ それでも天文学者なの!」

「まあな 学会で発表したこともあるぞ」

「へー そしたらさー もう少しがんばんなよー せっかくここまでやったんだから~」

「俺の勝手だろ アーティストさん あんたも観てみろよ」

「アンタさー 御殿さんを見なさいよー
 誰にも評価されなくても 自分を信じてやり続けているんだから~」

「ちょっと さっちゃん 誰にもってさぁ そりゃないんじゃない・・・
 まあ 当たってるけどさー」

「自覚してるんだから 言うまでもない って?」

「一応 何人かいるよー 理解者が・・・」

「はっ そんなもん 当てにならへん」

「んー これ 星なのかなー 倍率上げるのは どうやってやるの?」

「ああ その ダイヤルを回してみろ」

「えーと あー 大きくなった・・・ ん?」

「どうした?」

「これ 星じゃないよ」

「なに?」

「さっちゃん 行こう」

「あー 御殿さん 何が見えたの?」

「後で教えてあげるから さ 早く」

「おい お前ら この家」

「あー アンタ もう少しがんばったらぁ 続けていけば いつか成功するわよ」

「俺には無理だ」

「そう思ったら終わりだよー 出来ると思えば出来る! じゃあねー」

「おーい」





画像:ポツダムアインシュタイン
出典:ウィキペディアフリー百科辞典
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