「ROOM3」展

「ROOM3」展
2001年/日本文化会館/ローマ・イタリア

(展覧会パンフレットより)

三木あき子 キュレーター

本展は、展示空間に対して独自のアプローチをとる日本人若手アーティスト達の作品をローマで初めて紹介するものです。

イメージ 1近年、多くの現代美術展示空間は、ますますホワイトキューブと呼ばれる「白い箱」へと画一化傾向にあると言われます。そうした中、一部のアーティストたちは、より多様な展示空間を求めて街中へとその領域を拡大したり、既存のギャラリー空間のなかに生活空間をとり込もうとする試みを進めています。

その関心も方法もそれぞれ異なりますが、こうした展示空間に対する新たな意識は、モダニズム美術における「作品の自立性」という概念にさらなる疑問を投げかけるだけでなく、既存の場所の特性を浮き彫りにする、あるいは展示空間と作品間の対話がより重層的なコンテクストを生み出すといった点において興味深い方向性を示唆していると言えるでしょう。

イメージ 2本展では、衣服をテーマに、しばしばブティックなどの商業ディスプレイ空間を参照した展示を行うアーティストユニットID Boutiqueと、既存の家具等を用いて典型的室内空間あるいはショウルーム等をイメージする天江竜太が、ローマ日本文化会館のギャラリースペースにあわせて作品を設置します。それぞれの個々の作品は独立したものでありながら、全体でひとつのインスタレーションを成しており、言うなれば、その全体像は日本画の配された和風空間のなかに、異なる2つの「ルーム」が現出するようなかたちと捉えられます。

イメージ 3自立した個人のアイデンティティの模索、あるいは美術の脱構築を試みるID Boutiqueの衣服作品の数々、記憶の断片で再構築された「視覚の迷宮」のような天江竜太の平面イメージが会場空間と共鳴し合いながら、プライベートとパブリック、伝統と現代、東洋と西洋、服飾とアート、写真と絵画、引用とオリジナリティ、現代美術と展示空間といった関係について様々な思索を促します。

このように、本展は世界でも稀有な衣服を考察の対象とする、あるいは写真・絵画・室内装飾的要素を融合させるといった活動を通して、近年の現代美術ディスコースの重要な議題である異分野交流、美術領域の拡大といった点についても考える機会となることを意図しています。



(展覧会裏話)
三木氏はパリ在住のキュレーターで ナンジョウ・アンド・アソシエイツに在籍していた
私がパリに滞在した時に この展覧会の話を持ち掛けられ パリで制作した作品の一部は三木氏に預け ローマへ運んでもらった
残りの作品は 展覧会準備期間に間に合うよう 私が日本からEMSで発送した
展覧会開催の3日前 私はローマ入りし日本文化会館へ作品のセッティングをしに行ったが 私が送った作品が届いていない
現地スタッフによるとイタリア郵便局がストライキを起こし 郵便物の全てが動いていないという
大使館を通じ イタリア郵便局へ私の荷物を早く届けるよう依頼したが 荷物がどこにあるのかさえ分からないという状況・・・
仕方がないので持参した作品と三木氏が運んでくれた衣装数点を展示し その日は終わってしまった
翌日 荷物が届くかもしれないと現地スタッフが言うので 日本文化会館で待機するも荷物は届かず1日棒に振ってしまった
展覧会当日の朝 日本文化会館へ行ったが荷物が届くかどうか分からないと言うので 私はせめてトレビの泉だけでも行きたいと言い 外へ出た
ローマに来て観光地にひとつも行っていないのである
出る時 現地スタッフから携帯電話を渡された 荷物が届いたら連絡するからと・・・
どうせ届かないだろうから セッティング方法を現地スタッフへ伝え 届いてからやってもらうしかないと思っていた
私はトレビの泉へ向かう途中 みやげ物店へ立ち寄り みやげ物を買って店を出たら携帯電話が鳴った
今 荷物が届いた 至急戻ってセッティングして欲しい と現地スタッフが言う
時刻は11:30頃だったので すぐ戻れば夕方のオープンに間に合う
私はトレビの泉を見に行かず 日本文化会館へ戻り 皆の協力を得て作品の全てを展示し終えた
オープニングパーティも無事終え その夜 日本文化会館の館長とスタッフと三木氏らと打上パーティがあった
翌日は早朝にローマを発ち チューリッヒへ向かったので 結局 私はローマの観光地を訪れることが出来なかった