「ハッピィ・バディ・デイ 」展

「ハッピィ・バディ・デイ (アミューズランド2002)」展
2002年/北海道立近代美術館/札幌・北海道

(同展覧会カタログより抜粋)

中村 聖司 北海道立近代美術館学芸員

アミューズランドは、大人から子どもまで、幅広い層に美術に親しんでいただくことを目的に、1993年から始まった展覧会です。今年で10回目を迎えました。

イメージ 1今回の「ハッピィ・バディ・デイ(Happy Body Day)」は、鑑賞者が見るだけではなくもっと能動的に体験したり参加できる展覧会という前回の方向性を引き継ぎながら、テーマのうえで前回からの展開を図りました。それが「からだ新発見」というテーマです。前回の「アート・体感・ミュージアム」が「美術をからだで感じる」展覧会であったのに対し、今回のねらいは「美術でからだを知る」ことと言ってよいでしょう。サブタイトルにある「じっけん」も、自分で試して知るという趣旨が集約された言葉です。(中略)

展覧会の内容は大きく二部構成に分けられます。
ひとつは、「じっけんアート」。鑑賞者が作品にはたらきかける、つまり「じっけん」できる作品を紹介しています。まさに自分のからだを通して、こんなことができる、あんなことができるということが実感できるでしょう。そしてそれが、自分のからだをめぐる新発見に通じていくはずです。





個々の作家の仕事に少しふれましょう。
わたしたちは日常でも、身にまとう服を着替えることで気持ちを変えたり社会的な立場を表明していますが、そこにもっとゆたかな人間の変化の可能性を見出し、自由な発想の服を制作するのがアイディーブティックです。出品作のなかには3点の新作が含まれています。鑑賞者が願い事を書いたリボンを付けていく<短冊ドレス(写真:上)>、白衣を着た鑑賞者に映像を投影する<アイデンティティの試着室(写真:中)>、真っ白なつめえりの服が色のついた液体を点滴されて徐々に染められていく<ステンドスーツ(写真:下)>。いずれも変化していく服です。(中略)

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イメージ 3昨年の方向性を引き継ぎながら展開を図った今年のポイントは、先にも記したように、「感じること」から「知ること」へ一歩踏み出したところにあります。それは人間のからだという大海に、美術という探検船に乗ってこぎ出すことと言ってもよいでしょう。そしてそれが、からだに秘められた可能性を明らかにする美術のすばらしさと、それでもなおきわめ尽くされることのない人間という存在の深さやゆたかさについて、まさに身をもって知るきっかけになってくれればよいと願っています。