経堂茶会(本席掛物)

10月6日の晩
建築家井上明日香さんのアトリエで茶会を開催させて頂いた

茶の湯で10月は名残

前年11月に口切した茶が残り少なくなり
欠けて繕った茶碗などを用いて侘びた風情を味わうもの



井上さんのアトリエは小田急線「千歳船橋」駅と「経堂」駅の中間辺り
天祖神社の向かいにある

当夜は満月

月見茶会にしようか…とも考えたが天の月より美しいものはないと思い
お客様には行き帰りの夜空に輝くお月さんを楽しんで頂くとして
茶会では月に纏わる物を使わないようにした

(当日は大雨で月見どころではなかった)

主題となる掛物は一休宗純の句「秋風一夜百千年」
私の大学時代の同級生、熊本在住の西松君へ依頼した

彼は大学時代、木版画を専攻しており、得意の版画で句を彫り刷ってくれた


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私は彼の独特な字体 作風が好きなのだ

「普通、色紙は床の間に掛けません」と言う師匠に頼み込んでお許しを頂いた

さて主題とした「秋風一夜百千年」は一休が晩年愛した盲目の女性 森(しん)へ
「秋風が吹くこんな一夜にあなたと一緒にいると、百年にも千年にも感じられる」
と詠んだ句とされる

狂雲集(下)の最後の方に出て来る偈頌だが
七言絶句(七文字四句で起承転結)のその句は


臨済児孫不識禅
正傳真箇瞎驢辺
雲雨三生六十劫
秋風一夜百千年


である

前二句は当時の堕落した臨済宗禅僧に対する批判であり
我こそは臨済宗を嗣ぐ真の者だと言っている

そして転となる句の「雲雨」は男女の情愛を示し
三生六十劫とはとてつもなく長い時間を意味する

三生とは三回生まれ変わること… 一休は森女へ三生の愛を誓ったので
秋風の一夜が百千年にも思えるのは森女が寄り添っていたからだと解釈されている



しかし…

起承転結とは言え 前二句と後二句では余りにも関連がないように思うが
この偈頌に限らず狂雲集では関連性のないような句で構成された偈頌がある

アーティストの私から見ると それは一種の創作手法である

一見結び付かないような事象を合わせた時に新しい物が生まれる…
逆に言えば 新たな物を作ろうとすれば無関係のような物事を組み合わせれば良い

とは言え何でも闇雲に繋げれば良いという訳ではないが…



さて 狂雲集を読むと引用がやたらに多い

臨済宗が考案(禅問答)重視なので臨済録や碧巌録をはじめ
禅宗に関する書物を一休はよく読んでいたのであろう

生半可な知識では太刀打ち出来ないほど精通していたと思う

この句を掛けるに当たって私も一休を調べまくったし
狂雲集の上下巻を原文で読破した

佳き学びの機会を与えて頂いた一休和尚と井上さんに感謝☆



因みに写真の床飾りの花は秋海棠
これをゲットする話もまた面白いのだが割愛させて頂く

花入は時代物の竹花入
香合は砧(小生作)