「御殿のお兄さまー」 「ああ なおちゃん・・・ お兄さまはやめてよー」 「でも そう呼びたいんです」 「まあ いいか・・・ 最近 体の調子はどぉ？」 「だいぶ よくなりました」 「そう それはよかった」 「あのぉ・・・」 「何？ まさか さっきの見てた？」…

「さっちゃんの専用駐車場が１階にあって そこから直通の専用エレベーターで一気に３０階へ」 「やっぱり そうこなくっちゃね♪ クルマは何？」 「やっぱ フェラーリでしょ」 「真っ赤なやつね ゾクゾクするわぁ。。。」 「エレベーターを降りると広いロビー…

「ワンフロアは９００屬らい １０ｍスパンで １６本の柱」 「そんなの どうでもいいんちゃう？」 「一応 設計者としては施主に説明しないと・・・ 阪神淡路大地震レベルの地震でも びくともしないように」 「免震装置 入れるのね」 「そう 積層ゴムを入れて …

「これでどぉ？」 「あーあ やっちゃった・・・」 「御殿さん すごいねー 夢御殿って」 「そ そうだね・・・ 何でも一瞬でできちゃうから・・・」 「ほら 見て見てぇ！ あんなにたくさんの人が」 「えっ！ えーーーーーーっ！ もう電車走ってるのー」 「みん…

私は独り言を呟きながら 緑の丘を下って行った あー ここからも見えるんだ バベルの塔が・・・ さゆりさんは とんでもないもの造っちゃったよなー 無限上昇建築なんて・・・ 「見ぃちゃった」 「え！」 「御殿さん こんにちは！」 「あー なんだ さっちゃん…

「大事だからだよー クルマないと ここじゃ生きていけないから」 「しょうがない人ですね・・・」 「で こっちがエントランスで 玄関を入るとホールがあって 正面がガラス張り」 「それで 海が一面に広がっているんでしょ」 「そうそう いいよねー 床は白い…

そこは緑の丘の中腹・・・ 岩盤がむき出しになっていて その一画だけ木が生えていない 海が一望で 木々に囲まれている 抜群のロケーションだ 「こっちに来てください」 「ん なに？」 「これ 見てください」 「おっ 湧き水ですかー 飲めるかな？」 「ええ も…

私たちはBXに乗って 緑の丘へ向かった 「このクルマ 乗り心地 いいですね」 「ああ そう？ フランスのクルマなんだ」 「フランス 好きなんですか？」 「んー 微妙・・・ 大好きだったんだけど 住んだら そうでもなくなった」 「えー 住んでたんですか どこに…

波打ち際に建てるとなると 自然な感じの住まいがいい 丸太組みのログハウス？ 海には似合わないか・・・ では 鏡面仕上げのステンレス板で覆うか？ 回りの景色が映りこんで きれいだろうなぁ きっと・・・ それと ガラスをうまく組み合わせて・・・と まあ …

私はガレージに行き 愛車に乗り込む CITROEN BXはコンパクトながら 広い室内空間と 油圧式サスペンションによる極上の乗り心地が魅力だ 後輪が半分隠れたデザインは シトロエンであることを静かに語る 車体を低く伏せたBXは エンジンをかけてしばらくすると …

心の旅から戻ってみると 夢御殿は旅立つ前のままだった しかし 人影はなく 荒涼としていた 私がつくり上げてきた夢の住まいを 改めて見ると 欲望の果てに滅びた過去の都市の幻影が重なるようだ 人にとっての幸せとは・・・ 幸せな人生とは何か？ 身の丈に合…

２泊のＣＡＣ下見はあっという間に終わり ディレクターはウィリアムズタウンまで 私たちを車で送ってくれた バスに乗り４時間かけてマンハッタンへ戻る ホテルのフロントで部屋の鍵を受け取り 階段を上って３階のＶＩＰルームへ行く トイレのドアノブは… 直…